特定技能外国人を採用するとき、候補者の経歴や面接評価だけで採用可否を決めることはできません。予定する業務が制度上の分野に該当するか、本人が技能と日本語に関する要件を満たすか、雇用契約が求められる内容になっているか、企業に支援体制があるかを順番に確認する必要があります。
対象分野や業務区分、試験、移行の要件は、制度改正や分野別の運用によって変わる可能性があります。そのため、「似た仕事だから対象になる」「同じ資格を持つ人を以前採用できた」といった経験だけでは判断せず、採用時点の一次情報を確認することが重要です。本稿では、採用担当者と現場担当者が候補者ごとに確認する実務を整理します。
採用活動を始める前に、外国人が実際に担当する予定の業務を具体的に書き出します。会社の業種や求人票の職種名だけでなく、一日の主な作業、付随する作業、作業場所、使用する設備、繁忙期の配置などを現場へ確認します。その上で、最新の制度資料に示される分野、業務区分、業務の範囲と照合します。
対象分野は変更や追加がありうるため、本稿で固定的に断定することはできません。関係省庁の分野別運用方針、運用要領、告示などの一次情報を確認してください。制度上の名称と社内の職種名が異なる場合もあるため、名前の一致ではなく実際の業務内容で判断します。
主たる業務が対象に見えても、配属後に別の作業が中心になれば、採用時の前提とずれる可能性があります。求人作成、面接、雇用契約、配属先への説明で同じ業務内容を使い、配置変更が生じる場合の社内確認手順も決めます。判断が難しい場合は、自己判断で進めず、所管する行政機関などの一次情報や案内を確認します。
特定技能一号では、分野に応じた技能評価試験への合格、または技能実習等からの移行によって技能に関する要件を確認する考え方があります。ただし、どの経歴がどの業務区分への移行に対応するか、免除や移行の条件は何かを、候補者ごとに確認する必要があります。
試験合格者については、合格証などの資料だけでなく、受験した試験、対象分野、業務区分、本人情報の一致を確認します。試験名や実施方法の細部を記憶で判断せず、採用時点の分野の試験実施要領を確認してください。似た名称の試験や古い資料を取り違えないよう、確認日と参照した一次情報を採用記録に残します。
技能実習等から移行する候補者では、修了状況、従事した職種や作業、予定業務との関係、評価に関する資料を確認します。「技能実習を経験した人ならどの特定技能の仕事でもできる」とは限りません。紹介会社からの説明だけで結論を出さず、企業側でも原資料と最新要件を照合します。
日本語については、制度上求められる試験への合格や、一定の移行経路による扱いなどを確認します。対象となる試験や免除の条件は変更される可能性があるため、候補者の証明書と最新の一次情報を照らし合わせます。氏名、受験番号、試験の種類、結果などの確認も必要です。
ただし、制度上の日本語要件を満たしていることと、自社の業務指示をすぐに理解できることは同じではありません。面接では、日常会話の流暢さだけでなく、安全指示、数や単位、品質上の報告、体調不良の申告、分からないときの質問など、業務に必要な場面を想定して確認します。
難しい表現を理解できるかだけを試すのではなく、企業側がどのように指示を伝え、日本語学習を支援するかも採用前に整理します。本人の現在の能力と配属後の教育方法が合わなければ、採用後に本人と現場の双方が負担を抱えます。試験結果、面接での確認、入社後の育成を一続きで設計することが重要です。
特定技能外国人の雇用契約では、報酬が日本人と同等以上であることなど、制度上の基準を確認する必要があります。単に社内の最低額を当てはめるのではなく、同じまたは比較可能な業務に従事する日本人の処遇、経験、技能、責任の範囲などを基に、比較の考え方を説明できるようにします。
基本となる報酬だけでなく、手当、昇給、賞与の扱い、労働時間、休日、残業、控除、業務内容、就業場所などを本人へ分かる形で説明します。求人票、雇用条件書、申請資料、本人への説明に食い違いがないかを確認してください。母国語など本人が十分理解できる方法で説明する必要がある事項についても、最新の要件に沿って対応します。
採用途中で配属先や条件が変わった場合は、口頭説明だけで済ませず、書類と申請への影響を確認します。制度上必要な手続を断定せず、変更時点の一次情報に基づいて判断します。
特定技能一号の受け入れでは、支援計画を作成し、必要な支援を実施できる体制が重要です。生活オリエンテーション、住居に関する支援、日本語学習機会の提供、相談対応、転職時の支援などの類型について、自社で行うか登録支援機関へ委託するかを検討します。公式な支援項目や実施方法は最新の一次情報で確認してください。
自社支援では、制度上の体制要件に加え、対応言語、担当者の経験、勤務時間、記録管理、緊急時の連絡などを実際に運用できるか確認します。登録支援機関へ委託する場合は、委託先が対応する範囲と企業側に残る役割を明確にします。支援を外部へ委託しても、雇用主としての労務管理や安全衛生、業務指導は企業が担います。
採用決定後に支援方法を考え始めると、住居や事前説明、連絡体制の準備が間に合わないことがあります。候補者の居住地、使用言語、家族状況、入社予定時期などを踏まえ、支援計画を実行できる見通しを採用判断に含めます。
特定技能の採用では、分野該当、技能、日本語、雇用契約、支援体制を候補者ごとに確認します。技能は一号評価試験への合格だけでなく、技能実習等からの移行が関係する場合がありますが、具体的な対応関係や試験名は分野の試験実施要領などの一次情報で確認する必要があります。
制度要件を満たすかという確認と、実際の職場で安全に働き成長できるかという確認は、どちらも欠かせません。対象分野や試験を過去の経験で断定せず、最新情報と原資料を照合し、雇用条件と支援体制を採用決定前に整えることが、入社後の行き違いを防ぐ実務の基本です。